イケメンエリート、愛に跪く



すると、愛を挟むように父親が隣に座り、愛の肩を抱き寄せた。


「愛…
舟君と一緒にロンドンへ行きなさい…
その方が愛のためにもいい。

このまだ世間がうるさい日本を離れて、舟君と楽しんでおいで。
愛を見てれば、舟君の事が好きで好きでたまらないのは分かってる。
亮の言ううように、それは子供の時から変わらない。

そして、舟君は、僕達に約束してくれた。
愛ちゃんを必ず幸せにしますって、それは僕にしかできませんって…

愛…? 亮が言ったとおり、愛が幸せにならないと父さんも母さんも不幸せなんだよ。
だから、ほら、早く、荷造りをしなさい。

成田まで父さんと母さんと亮で送って行くから」


愛はやっと顔を上げた。
もう顔は涙でぐしゃぐしゃだ。


「で、でも、明日にはロンドンに行っちゃうんだよ…?
もう、しばらく会えなくなるかもしれないのに、母さん達は寂しくないの?
大丈夫なの…?」


すると、愛の両親は二人で顔を見合わせて笑った。


「愛、舟君がもう一つ約束してくれたんだ。
愛が日本に帰りたくなったらいつでも帰っていいし、お父さん達もしょっちゅうロンドンに招待しますって。
全く自慢じゃないですが、僕はすごくたくさんお金があるんです。だから、気がねなく遊びに来てくださいって」


愛は皆と顔を見合わせて、クスッと笑った。

舟君っていつもこんな感じで、ほんわかと皆を幸せな気持ちにさせてくれる。
愛は舟の魔法で心のわだかまりが取れた気がした。

そして、父さんや母さん、亮の笑顔を見て、私の幸せを握っているのは舟しかいないと確信した。

私が幸せになる事は家族も幸せになる事…
そして、その幸せの先には舟君の幸せもあるという事…


愛は前を向いた。
私は、舟君と一緒に歩んでいきたい…





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