イケメンエリート、愛に跪く



舟はソファで寝てしまった事実に、今気付いた。
暖房は入れっぱなしだったから寒くはなかったが、どうにも喉がガラガラしている。
舟はスマホの時計を見て、ため息をついた。

マジか… 
タロウさんが迎えに来るまで、後40分しかない。


昨日は午後に愛の両親と会ったため、あり得ないほどに時間が無くなってしまった。
会社に帰ってからまた社長室に籠り、必要最低限の仕事をとりあえず済ませた。
時計を見たら夜の10時を回っていて、そんな舟にジャスティンからメッセージが入った。

“上のバーで飲んでる 待ってる”

あの時に止めておけばよかった。
あのメッセージではジャスティンだけだと思っていたのに、店に入ったらほとんどのメンバーが揃っていた。


「舟、明日発つんだって?」


そう聞いてきたのは、いい感じに酔っている映司だった。


「そう、明日の昼過ぎの便。
だから、ごめん、今日は飲めない。
荷造りも何もしてないから」


舟はそれだけ言って、帰るつもりだった。
愛の話に話題がならなければ…

舟は、皆が話す凪と舞衣のなれそめの話が面白くて、ついついウィスキーを飲みすぎた。
本当にもう帰らなきゃヤバいと思い立ち上がったその時、映司が余計な事を聞いてきた。


「愛ちゃんは置いて行くんだろ? 日本に」








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