イケメンエリート、愛に跪く
「舟君、私、搭乗口を間違ってて、ハイクラスな人達はそこから入るもんだと思っててずっとそこで待ってて、あ~、いいから、急がなきゃ。
舟君、すごいギリギリなの分かってる?」
舟はまだ酔っ払ってるのか、この展開についていけない。
愛に手を引かれあれよあれよという間に、搭乗審査に入国審査まで済ませていた。
確かに、舟達の乗る飛行機の機内への案内アナウンスが流れ始めている。
舟は愛に手を引かれ、ずっと小走りで走っている。
それはとても懐かしく、舟と愛の始まりの姿だった。
でも、もう、僕達はそんな小さな子供じゃない。
慌てた顔をして急いで歩いている愛を、舟は後ろへ引き寄せた。
「愛ちゃん、キスしていい? キスしたい」
愛はこんなギリギリの状況でそんな事を言う舟に呆れて振り返ったその時、舟に抱きしめられた。
「10秒くらい遅れたってどうって事ないよ。
だって僕は、この航空会社のダイヤモンド会員の更にその上のメタル会員なんだから。
メタル会員って分かる?
業界では幻のメタルって言われるくらいに最高級のステータスなんだよ」
舟はそう説明しながら、日本という場所に配慮して階段の踊り場近くに愛を連れて行く。