イケメンエリート、愛に跪く
愛は舟の事が大好きだった。
赤ちゃんの時から、舟とはよく遊んだらしい。
でも、私も舟も覚えてはいない。写真は何枚も残っているけれど。
舟がお母さんとアメリカに旅立って、毎年夏休みにだけおじいちゃんの家に帰ってきた。
そこからの記憶は褪せることなく覚えている。
舟君は、愛ちゃんだけが僕の友達と言ってくれた。
僕は、愛ちゃんに会いに日本に帰って来るんだよって…
大人になった舟は、見た目はファッション雑誌から出てきたモデルのようだ。
でも、愛を見つめる優しい目は、あの頃と何も変わらず愛を寛容に包み込んでくれる。
「愛ちゃん… 大丈夫?
何だか顔色が悪いみたいだけど」
舟は目の前に立つ愛の頬を優しく触った。
触った途端、愛の大きな瞳から涙が一筋流れ落ちる。
「……愛ちゃん?」
舟は誰よりも勘の鋭い男だ。
愛の涙は、それだけで愛の心の苦しみを映し出した。
僕にとって、この柔らかな物腰やマイルドな風貌はあってないようなもの。
だって、僕の手の中でこぼれ落ちる愛の涙は、僕の中の狼以上の保護本能に火がつけたから。
「あ、ご、ごめんね…
なんか最近体調が悪くって、何でもないのに涙が出たりするんだ。
大丈夫だから、気にしないで…」