イケメンエリート、愛に跪く



舟はまだ愛の頬を触っている。
中々、手を元に戻す事ができない。


「あ、さっきの質問にまだ答えてなかったね。
僕は、仕事のために日本へ来たんだ。一か月滞在する予定。

それと、何でここに来たかって?

それは、愛ちゃんに会いに来たんだ…
愛ちゃんを救うために…」


舟はいつの間に愛の顔を両手で包んでいる。


「…救うって?」


愛の瞳にまた涙が溢れ出す。


「それは今からのお楽しみ」


舟はそう言うと、愛を軽く抱きしめた。
見た目は日本人でも中身はアメリカ人の舟は、スキンシップを欠かさない。
そんなさりげない温もりは、愛の荒んだ心に沁みわたる。


「あ、でも、舟君、何でここを、この特別ルームを借りれたの?
実は、私、特別ルームで来客が待ってるって聞いて、ドキドキしてた。
だって、この部屋は、あまり普通の人には貸し出さないから…」

舟は肩をすくめた。
さあねみたいな顔をして。


「日本に来るにあたって、日本特有の名刺?みたいなものを作らされたんだ。
それを見せただけだよ」


舟はそう言うと、その名刺を愛に渡した。


「東京支社の住所やら書いてあるし、あと、裏の方には僕の電話番号が書いてある」


愛はその名刺を見て驚いた。
“EARTHonCIRCLE”という会社は知っている。
以前、報道番組でアメリカの経済を特集した時、世界的上場企業として名前が挙がっていたから。





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