イケメンエリート、愛に跪く



「愛ちゃん、いよいよだよ…」


涙で暮れる愛に舟はそう言った。
進行役を買って出た舟の弟が、「次はブーケトスです」と大声で叫ぶ。

でも、実際、ブーケを受け取る対象となる独身女性は美弥しかいない。
一斉に皆に注目されて、美弥は顔を赤くした。

実は美弥は愛からブーケトスの事は聞いていた。
でも、若い女性が自分しかいないなんて、そんな事聞いてないよ~

美弥は愛の弟に手を引かれ、愛の真後ろに立たされた。
美弥は恥ずかしくて、ずっとタロウを見ている。
タロウは必死に笑いを堪え、頑張れと美弥にエールを送った。

舟はあまりの茶番劇に頭が痛くなっていた。
ブーケを渡したいなら、何もこんな事しなくてもそのまま手で渡せばいいじゃないか…

でも、隣ですごく緊張している愛を見て嫌な予感がし始める。


「愛ちゃん、今、投げる前に振り返って、美弥ちゃんの場所をちゃんと確かめて。
真後ろだけど、ちょっと距離があるから、分かった?」


舟は愛の運動神経のなさを知っている。
でも、いくらなんでもこの距離だ、大丈夫だろ?

美弥は美弥で、こんなに皆に注目された状況で取らないわけにはいかないプレッシャーに押しつぶされそうだった。
愛さん、お願いだから、ちゃんと投げてくださいね…



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