イケメンエリート、愛に跪く
「え? 舟君…
CEOって書いてあるけど、社長なの??」
舟は自分の名刺を初めてちゃんと見たような顔をして、また肩をすくめた。
「このCEOは、副社長的な意味だと思う。
社長は母さんだから。
母さん、覚えてる?
僕はその下でこき使われている」
愛は開いた口が塞がらない。
舟があの世界的に有名な会社の副社長?
それもあの舟君のお母さまが社長って…
それならこの特別ルームに通された経緯も分かる。
どこをどう切り取ってもVIP以外の何者でもないもの。
「そんなに驚く事かな?
でも、よかった… 愛ちゃんの瞳から涙が消えて」
舟はウィンクをして愛にそう言うと、思い出したように腕時計を慌てて見る。
「愛ちゃん、もう戻った方がいいんじゃない?」
舟はこの会社での愛の立場が悪い状況はもう分かっている。
だから、できるだけ辛い思いはさせたくなかった。
でも、舟がそう言った途端、愛の表情が曇った。
その顔を見た舟は、今からここの局長に直談判に行ってやろうかと横暴な考えが浮かんでしまう。
きっと、僕の一言で、こんな会社なんかひねり潰す事なんて簡単だ。
でも、止めた。
まだ時期早々だから。