イケメンエリート、愛に跪く



愛は何だかんだ時間を潰して仕事に戻ろうとしない。
舟はそんな愛をなだめるようにこう言った。


「愛ちゃん、今夜、時間ある?
一緒に食事でもどう?」


愛は一秒もかからずに大きく頷いた。


「って言っても、僕もあまり東京は知らないんだ。
だから、夕方またここへ迎えにくるよ。
それでいい?」


舟は愛の浮かない顔が気になった。
心の傷はまだ何も癒えてないみたいだね…


「ご、ごめんね…
変な意味じゃなくて、あまり人混みを一緒に歩きたくないんだ。
会社の周りは特に…」


舟は目を反らさずに愛を見ている。
有名人というだけでどんなバッシングを浴びてきたのか、考えるだけで無性に腹が立ってくる。


「じゃ、車で迎えに来るよ。
ちょっと先にある公園の前で待ってる。

だったら誰にも見られないでデートができるだろ?」


「舟君、日本で運転できるの?」


舟は意地悪そうな笑みを浮かべて愛の頬をまた触った。


「運転手がいるから大丈夫だ…
愛ちゃんのしたいようにしよう。

今は、それが愛ちゃんに必要みたいだからさ」


愛は、泣きたくてしょうがなかった。
でも、久しぶりの再会なのに、泣いてばかりで舟を困らせたくない。


「舟君、ありがとう…
何だか、すごく嬉しい…」


愛は舟を見送った後、トイレで泣いた。
自分の存在を大切に思ってくれる大好きな友人が、突然現れた事に何よりも感謝して…












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