イケメンエリート、愛に跪く
舟は愛の会社のビルを後にする時、受付の女の子に会社の終了時刻を聞いていた。
念のためにと思った事が、その予感は悲しい程ピタリと当たった。
遠くに愛の姿を見つけた時は、胸が切なさでいっぱいになった。
僕にとっての愛ちゃんは、いつも笑顔で明るくて元気があって自信に満ちあふれていたのに…
舟はその愛の健気さを奪った何者かを殺してやりたいと思った。
命を奪う事はできないが、他のやり方で苦しめる手段はたくさんある。
それに、他人のはずなのに、愛の哀しみと苦しみがダイレクトに舟の思考に入ってくる。
大きな目に涙を浮かべそれでも笑顔で歩いて来る愛を見て、舟はやりきれずに空を見上げた。
「舟君、こんなに早く来てくれたんだ…」
愛はそう言いながらも、他人の目を気にしてビクビクしている。
でも、舟にとっては、そんな事はくだらないしどうでもよかった。
愛ちゃんを苦しめる全ての事から僕が守ってあげる…
どういう手段を使ってでも、今の愛ちゃんの地位を取り戻し、本物の幸せを日本中の皆に配信する。
そして、愛ちゃんは僕のものになる…
最高の結末を僕がちゃんと準備してあげるから、それまでもう少しの辛抱だよ…
「そこに車があるから、おいで…」
舟はそう言うと、愛を優しく引き寄せた。