イケメンエリート、愛に跪く
愛は公園の駐車場に停まっている車を見て、また目を見開いて驚いた。
そこには黒塗りのベンツが、それも運転手付きで停まっている。
「タロウさん、とりあえず僕の会社までお願いします」
舟は後部座席に先に愛を座らせた。
アメリカ育ちの舟はレディファーストが自然と身に付いている。
キョロキョロと車の中を見回す愛に、舟は少し気分が落ち着いた。
「この車は僕の友人の物なんだ。
この間まで東京支社にいたんだけど、今は、僕と一緒にニューヨークにいて、東京で住んでたマンションも車も置いてきたままで、それで今回それを全部貸してもらってる」
「ぜ、全部って?」
舟は、小学生のように喰いつく愛に思わず笑ってしまった。
「まずはマンションだろ、ホテル並みにフル装備の超豪華マンションなんだ。
あとこの車に、運転手のタローさん。
友人の婚約者の話では、タローさんは何でも知ってて頼りになってすごく優しい人だって」
運転中のタローは、ルームミラー越しに愛を見て軽く会釈をした。
愛もつられて頭を下げる。
「凪には悪いけど、あ、凪って僕にマンションを貸してくれてるその友人なんだけど。
今日は、その凪のマンションで、二人の再会の乾杯をしようか…?
その方が愛ちゃんもゆっくりできるだろうし」