イケメンエリート、愛に跪く
舟は、今まで謙人やジャスがどんなに悪ふざけをしても、こんな風に怒りをぶつける事などなかった。
でも、謙人の愛を見る目が許せなかった。
自分の中に狼的要素がある事は知っているけれど、親しい仲間なのにこの感情をコントロールできない事に一番驚いた。
愛ちゃんは僕のものだ…
その単純な感情は、僕を違う者にしてしまうかもしれない。
「ねえ、柏木愛さんって、もしかしてアナウンサー?」
ジャスのその何気ない一言は、愛の表情を凍らせた。
舟はそんな愛にすぐに気付き、更に肩を引き寄せる。
でも、健気な愛は小さな声で「はい」とそう答えた。
「ちゃんとテレビを観てたわけじゃないからあまり良く分からないけど、でも、あのバッシングは酷かったね。
不倫っていう行為は、個々の相互関係が成り立っていれば他人がとやかく言う事じゃない。
ここにいる謙人とか、映司とか、そんな事言われたら、吊るし上げじゃすまないくらいの事をしてるしな。
でも、ああいう場なのに、凛としている愛ちゃんにはジンときた。
自分が全部罪を背負って、あんな最低男をかばう必要はなかったのに。
俺は柏木愛っていうアナウンサーは好きだよ。
世間の人間も、そういう奴って多いと思う」
謙人は何も知らないのか、手のひらを上へ向けてお手上げ状態のポーズを取っている。
「愛ちゃん、今度、舟の歓迎会をしようと思ってるんだ。
その時は一緒においで、皆で色んな事に乾杯しよう」