イケメンエリート、愛に跪く
ジャスと謙人が社長室からいなくなると、愛は抱き寄せられている舟から静かに離れた。
「舟君、驚いたでしょ?
実は、私、世間を賑わせて追放された女なの…
ジャスが言ってたように、妻子ある人と不倫して」
「愛ちゃん?」
舟は愛の言葉を遮りたかった。
そんな過ぎた事は聞きたくないし、今の舟には何の意味もない。
「思い出したくない過去は早く忘れなきゃ…
僕はそのために、ここに来たんだ。
愛ちゃんを救うために来たって言っただろ…?」
愛の瞳に見る見る内に涙が溜まる。
この子はどれだけの心の傷を抱えているのだろう…
舟はいつもの人懐っこい笑みを浮かべ、愛の手を引いてソフィアの机の前に連れて来た。
「これ見た?」
舟はそう言うと、フォトフレームを持ち上げる。
愛はまだ涙を浮かべたままだ。
「愛ちゃん、時間って、あっという間に流れて行くんだ…
僕達が子供で、おじいちゃん達もまだ若くて、無邪気に夏を過ごしていた時から、もう何年経った?
僕達は大人になって、おじいちゃん達はこうやって老いていく」
舟は写真に写る祖父母を目を細めて見ている。
「でも、時が流れても変わらないものもある…
僕は子供の頃、いつも愛ちゃんに守られてた。
愛ちゃんの隣は居心地がよかったし安心できた。
…今度は僕の番だから。
愛ちゃんを守るために、今、僕はここにいる…」