イケメンエリート、愛に跪く
愛にとって舟の言葉は、枯れた土地に降り出した恵みの雨のようだった。
警戒心とか恐怖心とかそういうもので覆われた愛の心に、優しく沁みわたる。
でも、愛の事を一番に考えてくれる大切な友達だからこそ、愛は舟を巻き込みたくなかった。
「舟君は小さい時から、すごく優しい子だった。
私と仲良してくれたのも、年に一回しか会わないから私のいい所しか見えなかったんだよ。
今回もそう…
もし、舟君が日本にいて、私がしでかした事をテレビやニュースで見たりしていれば、きっと今のような事は言えないと思う。
不倫っていうほどの深いつき合いじゃなかった…
でも、私は有名なテレビ局の局アナで、世間から言わせれば公人に等しくて、妻子ある男性との密会写真を撮られたら、もう何を言っても後の祭り…
家族も親戚も友達さえ、どん底に追いやった…
自分が蒔いた種だからこそ、この世の終わりくらいに辛かった…
舟君は、思い出の中の私しか見てない。
私は、もう、あの頃の無邪気な愛じゃない…
自分の罪を今自分なりに一生懸命償おうと努力してるけど、まだ世間の風も自分の心も許してはくれない。
だから、舟君も私を救おうなんて、そんな事考えなくていいんだからね…」
舟は応接セットのソファの背もたれに腰かけて、愛の話を聞いている。
「それで、言いたい事は全部?」