イケメンエリート、愛に跪く



タロウが連れて来てくれたお店は、東京郊外の有名な高級住宅街の奥にある隠れ家風のフレンチレストランだった。

愛はその店の名前を見た途端、ミシュランの星付きレストランだとすぐに分かった。
タロウは舟と愛を正面玄関には連れて行かず、裏道の舗道の先にあるコテージのような建物に案内した。

そこは丸いドーム風の作りで、外観だけ見ればプラネタリウムかと思ってしまう。
重厚な扉を開けて待っていたのは、黒いタキシードを着たスタッフだった。

タロウと一言二言言葉を交わすと、そのスタッフは最高の笑顔で二人を出迎えてくれた。

愛は職業柄、食レポや取材などで色々な店を訪れた。
プレイべートでも、会社の社長や局のお偉いさん達に豪華なレストランへよく連れて行ってもらった。

でも、こんなにも予想を裏切るお店は初めてだった。
プラネタリウム風の建物の中に入ると、そこは大きなプールとつながった不思議な空間だった。
黒と白を基調とした落ち着いた装いのインテリアに、むき出しの木材の床がアンバランスのようで、でも温かみを演出している。

そして、部屋の中央に二人掛けの円卓テーブルが一つ置いてあるだけだった。

舟と愛が席につくと、目の前に広がるプールが様々なライトによってキラキラと輝き出す。


「…綺麗」


愛のその言葉に舟は心から癒された。

今の愛には、心の栄養が必要だ。
綺麗とか、美味しいとか、楽しいとか、そんな単純な感情をたくさんたくさん味合わせてあげたい。

そして、僕はその愛ちゃんの笑顔で生き返る…
大げさかもしれないけど、本当にそう思えるんだ。



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