イケメンエリート、愛に跪く
「愛ちゃん、すごく気持ちいいよ。
愛ちゃんも裸足になっちゃえば?」
愛はスタッフの方を呼んで、その更衣室へ案内してもらった。
ストッキングを脱ぎ、備え付けのサンダルを履くと、舟の待つプールサイドへ急ぐ。
愛は舟の隣にある皮張りのロッキングチェアに腰かけると、愛を待っていた舟に目配せをして冷たくなった自分の足元をお湯に浸した。
ちょうどいいお湯の温度とはこの事で、愛は目を閉じて大きくため息をつく。
「舟君… とろけちゃいそう…」
黄色味がかった昔の電球のようなほのかな灯りが、目の前に広がるプールを照らしている。
冬のプールは幻想的で儚くて、でも温かみのあるライトのせいで、天国への入口のようだ。
愛と舟が静かに足を動かすと、その足元から広がる振動で大きな輪っかが金色のプールへ広がっていく。
その美しい光景を見ていると、愛はまた涙がこみ上げた。
でも、これは哀しみの涙ではない。
舟はそんな愛を自分の元へ引き寄せ、包み込むように抱きしめた。
「愛ちゃん…
僕が、愛ちゃんの全てのピンチから救ってあげる。
でも、その後は…
愛ちゃんは僕のものだから… いいね?」
金色のプールはきっと天国への入口…
愛に重ねたくちびるで、僕はそっと思い出した。
僕がこの世界に生まれたあの日から、僕の鼓動は愛ちゃんへ向かっていた。