イケメンエリート、愛に跪く



ちょっとだけ冷たい風が心地よく、愛は舟の腕の中で静かに頷いた。

何と言えばいいのだろう…
この不思議な気持ちの波を…
突然現れた、記憶の中では小さな男の子が、私の救世主になってくれるという。

人の目に晒されて、人間という生き物は怖い物だと心にインプットされた。
毎日がカンカン照りの夏の日のようで、飽きもせずに空は毎日青くて、普通の日常を普通に過ごす事を忘れたみたいに、通り雨がただただ恋しかった。

舟の腕の中は、足を浸しているお湯以上に、私をリラックスさせてくれる。
まるで乾いた心に通り雨をもたらしてくれたみたいに…


「愛ちゃん…
僕は、日本には一か月しかいれない… だから…

これから、愛ちゃんには僕の言う事を聞いてもらうから。

僕の言う通りにしてほしい。

いいね…?」


舟は水面に反射する金色の光を見ている。
抱きしめている愛の感触と甘い匂いに心乱されながら…


「言う通りって…
何をすればいいの…?」


舟は抱きしめる腕の力をフッと抜いて、愛のくちびるにもう一度キスをした。


「まずは、今の会社を辞めてもらう。
もし、愛ちゃんの力でそれができないなら、僕が直談判に会社に行く。

そんなクソみたいな会社に勤める事なんてないよ。

僕が、愛ちゃんに合ったもっと最高の職場を探してあげるから」









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