イケメンエリート、愛に跪く
翌日、愛は美弥と社員食堂で昼食を取っていると、制作部と思われる人間が同じテーブルに座ってきた。
美弥は愛の顔色が悪くなるのに気付き、すぐに席を立って帰ろうと促した。
愛もその言葉に甘えてその人達に軽く会釈をして席を立つと、一人の男性があからさまに愛を睨んだ。
「柏木さん、次の特番のMCの話、早くきっちりと断ってくれないかな。
今、俺達はその番組を一生懸命制作しているのに、不倫女のスキャンダルで番組が台無しになるのは耐えられないんだ。
俺達の気持ちも分かるだろ?
ごめんだけど、よろしく」
愛は美弥に腕を掴まれその場を逃げるように後にした。
「柏木さん、大丈夫ですか?
顔色が真っ青になってるから…」
女子トイレの前で、美弥は心配そうに愛に声を掛けた。
「…うん、大丈夫だと思う。
美弥ちゃん、私、MCは受ける気はないの…
早くそれを部長に伝えなきゃ、他の人にも迷惑をかけ…」
そう言いながら、愛の呼吸はヒューヒューと言い出した。
「柏木さん、袋は?」
美弥はそう言いながら目の前にあるトイレに愛を連れて行く。
トイレの中で、愛は何度も何度も呼吸を整えた。
私、舟君が言うように、やっぱりこの会社では生きていけないのかも…