イケメンエリート、愛に跪く



舟はテレビ局の受付で名前を言うと、すぐに局長室に通してもらった。
高層ビルの最上階にある局長室は、目の前に東京タワーが見渡せる最高のロケーションだ。

舟はテレビ局の重鎮達によって、最高の歓迎と手厚いもてなしを受ける。
にしても、こんなにたくさんの人達が必要か?と頭をかしげるほどに…


「EOCの高市様から直々にお電話を頂いて恐縮しております」


舟は、次から次へと様々な人達から代わる代わる名刺を受け取った。
日本の企業の人達は本当に目障りなほどに腰が低い。
舟にとって日本のこの習慣は異質にしか思えない。
五歳で日本を出て行った舟は、日本人の容姿を持った完全なアメリカ人だった。

舟は局長と呼ばれる人間から、今のこのテレビ局の現状の説明を受ける。
でも、その丁寧な説明を半分で遮った。


「あなた達の会社の実情は、わざわざ説明を受けなくてもちゃんと把握しています」


舟を取り囲む重鎮達は、どうやら舟の見た目のソフトさに騙されて思いやりの言葉を待っている。
でも、それは、一瞬だった。


「世界的に見てテレビ業界は、大手の動画配信事業会社に押されている事は知ってますよね?」


まだ舟の見た目に騙されている重鎮達は、笑顔を貼り付けてうんうん頷く。


「でも、日本のテレビ会社でもそういう大手の映像ストリーミング配信事業会社と手を組んで、頭二つほど抜け出している会社も二社ほどある」



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