イケメンエリート、愛に跪く
舟はビルの外に出ると時計を見た。
まだ愛が退社する時間まで、一時間ほどの時間がある。
舟は車で待っていたタロウに頼んで、高級アクセサリーの店に連れて行ってもらった。
確か、愛の誕生日がクリスマスだったのを覚えていた。
僕の誕生日は八月一日で、その時期は僕はいつも日本に居て祖父母と愛ちゃんに果物がたっぷりのったケーキでお祝いしてもらったのを覚えている。
「私も夏に生まれればよかった。
そしたら、舟君がいる時に一緒にお祝いできたのに」
その時、僕は、クリスマスが誕生日なんて素敵だよって言った記憶がある。
クリスマスはとうの昔に過ぎているが、僕がいるこの二月の日本で、愛ちゃんの過ぎてしまった誕生日を一緒に祝ってあげたい。
舟は小さなダイヤモンドがあしらわれたハートの形のネックレスを買った。
時期外れの誕生日プレゼントを愛が喜んでくれればいいなと思いながら…
舟はまた愛の会社の入るビルまで急いだ。
そして、車の中で愛にメッセージを送る。
“またあの公園の前で待ってる
残業とかしないで、さっさと帰って来て”
舟は車から降りて公園の入口で愛を待つ。
こんな他愛もない時間がとても素敵に感じ大切に思える僕は、愛を失うわけにはいかない。
こんな僕が僕の中にいたなんて、人生って本当に何が起こるか分からない。