イケメンエリート、愛に跪く
舟ははにかんだ笑みを浮かべ、愛をソファに座らせた。
そして、キッチンへ行くと、冷やしておいたワインを冷蔵庫から取り出す。
凪の食器棚に並んでいる何種類ものワイングラスの中から、舟好みの物を二つ取り出した。
すると、愛もいつの間にかキッチンに来ていた。
舟よりも手際よく、さっき買ったチーズとフルーツをやはり凪の食器棚からいい感じの皿を選び、センスよく並べた。
舟は正面の窓ガラスに反射して映る二人の姿をそっと見る。
これが自分の未来ならば、僕は幸せを手に入れたも同然だ…
「舟君はいつからお母様をソフィアって呼ぶようになったの…?」
二人ともソファに腰かけ軽く乾杯をすると、愛は開口一番にそう聞いてきた。
「何だか、昨日からずっと、僕への質問ばっかりだな」
愛はそんな風に拗ねる舟を優しく見つめる。
舟の心を鷲づかみにして…
「舟君の事を少しでも知りたいの…
何も分からない土地でどうやって成長していったのか…」
舟は愛が手に持っているワイングラスに、自分のグラスをまた重ねた。
カチンという小さな音は、舟の愛への忠誠心を表している。
「僕がアメリカに渡った時には、もう家ではそう呼んでたよ。
あの頃の僕は幼過ぎて、ソフィアの意味も何も分からない。
だから、アメリカ式の母さんの呼び方だとずっと思ってた…」
舟は幼い頃と同じ笑みを浮かべて、恥ずかしそうにそう教えてくれた。