イケメンエリート、愛に跪く
「お姉さん?」
舟はワインをグラスに注ぎながら、不満そうにそう聞いた。
「そうだよ、一個年上なんだからお姉さんでしょ?」
舟はワインのせいでほんのり赤くなった愛の頬に手を当ててこう言った。
「僕は一度もお姉さんなんて思った事はないよ…
愛ちゃんは愛ちゃん…
僕が日本へ帰りたいと思う大切な存在。
今では、このまま日本に留まりたいって思わせるかけがえのない存在…」
愛は目を反らさずに舟を見ている。
確かに僕は子供の頃から、愛ちゃんにこうやって愛を囁いてきた。
今思えば、恐ろしい程にませた子供で、そんな僕の言葉を覚えている愛ちゃんは、今さら僕がどう愛を囁いても心に沁みわたらないのかもしれない。
愛ちゃんのニコニコした笑顔がそう物語っている。
「ねえ、愛ちゃん…
僕はもう子供じゃないのは分かってる?」
愛はまだニコニコ顔をしている。
舟は愛の持つワイングラスをテーブルに置き、愛を自分の方へ引き寄せ力いっぱい抱きしめた。
「子供の頃の僕じゃない…
ほら、今の愛ちゃんはこんなに小さくて、大きくなった僕がこうやって優しく包み込むように抱きしめられる。
背の低かった子供の頃の僕じゃない…
もし、愛ちゃんを傷つける奴がいるとしたら、今の僕は、そいつを地獄の底に突き落とすほどの力を持ってるんだ。
精神的にも、肉体的にもね…」