イケメンエリート、愛に跪く


愛は酔っているせいにして、理解できないような顔をした。
本当はちゃんと分かっている。
舟君の言葉に嘘はないのは、誰よりも私が分かっている。

でも、怖くてしょうがない…

私の人を愛する心は、あの日あの時、きっととどめを刺されて死んでしまったから…

舟君を好きな気持ちも愛する気持ちも私の中では、確実に宿っている。
でも、それ以上は進めない。
進む事を、私の心が頭が、全力で阻止してしまう。

心を開いて全てをさらけ出して、そして舟君が私から離れてしまったら、私はもう生きていけないよ…


舟は愛を抱きしめながら、愛の戸惑いをちゃんと感じていた。


「あ、そうだ…
愛ちゃん、僕が日本に居る間、一緒にハワイに行こうよ。
今、僕の祖父母はハワイに隠居してて、きっと、絶対に、愛ちゃんを連れて行ったら凄く喜ぶと思うんだ。

会社、辞めれそう?
とりあえず長期の休みとか取れるかな」


舟はもうこの時点で決めていた。愛を絶対にハワイに連れて行くと…


「…舟君、無理だよ。
そんな簡単には辞めれないよ…」


愛は舟の胸の中から体を離した。


「舟君…
私も舟君にちゃんと話しておきたい事があるの…
今の私の事、ううん、今の私の会社での現状を」


愛はこんな自分の恥ずかしい現実を、本当は人に話したくはない。
でも、私の事を真剣に考え救ってくれようとしている舟には、ちゃんと話さなきゃダメだと思っている。
私が簡単に会社を辞められない理由を…






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