イケメンエリート、愛に跪く
愛はそう言いながら、今日制作部の人に言われた辛辣な言葉や愛を見る軽蔑した目を、嫌でも思い出した。
舟を目の前にして、呼吸が少しすつ乱れる事に更にパニックになる。
「舟君、ごめんね…
ちょっとベランダに出ていい?」
愛がそう言って立ち上がると、舟はすぐに愛を抱き寄せた。
「愛ちゃん…? 大丈夫?
顔色が急に悪くなったけど…」
愛は舟のその言葉と抱きしめてくれる温かい温もりに、涙がとめどなく溢れ出した。
あの日以来、精神のバランスがおかしくなっても、自分しか頼る人はいなかった。
処方されたたくさんの薬と小さな紙袋が、ギリギリの私の心を守っていた。
お互い好き合っていると思っていたあの人に、何の迷いもなく背を向けられた時のあの衝撃は、今でも私の心を傷つける。
人を信じる事が怖くなって、赤の他人の誹謗中傷に負けず嫌いの私の心はボロボロに打ちのめされて、それでも孤独にずっと耐えてきた。
舟君の腕の中は本当に温かくて、規則正しく聴こえる心音が私の荒んだ心に新しい時を刻んでくれる。
愛は子供のようにしゃくり上げて泣いた。
恥ずかしいのに、でも涙が止まらない…
もう、舟君の前で嘘はつけない…
これが、この弱い私が、今の本当の姿だから…