イケメンエリート、愛に跪く
舟は、愛が嫌がらない程度に、その不倫の結末の話を聞いた。
その事を話そうとする愛は、頑な心と必死に戦っているのが分かった。
心は舟を信じて話したいと思い、でも、体はあのトラウマを決して忘れていない。
愛は何度も何度も呼吸を整えながら、ゆっくり慎重に話してくれた。
舟は愛を苦しめるあの時期のトラウマを癒すためには、やはりまずは自分で外へ出さなきゃならないと思っている。
ゆっくりと少しづつ、舟は、愛の口からその苦しみが外に出るのを焦らずに待った。
僕を信じるんだ…
人間はそんなに悪い奴ばかりじゃないよ…
愛は何度も深呼吸をしながら、少しずつあの頃の記憶を外へ出す準備をする。
人間の心理とは不思議なもので、あのトラウマを闇に葬りたい衝動が強すぎた私は、その記憶に鎖をかけ鍵をしめ自分の深い深い奥底に沈めた。
でも、沈めたつもりでいても、頭に残った映像はフラッシュバックとなって常に私を苦しめた。
舟君の優しい触手が私の心に入り込んで、がんじがらめに巻かれた鎖をそして屈強な鍵を、温かい感触を残しながらひも解いてくれる。
あの時の苦しみが外に出てしまっても、舟君が受け止めてくれる…
その安心感は強烈なトラウマよりも勝っていた。
「愛ちゃん、最後に一つだけ、これだけは話してほしい…
その、愛ちゃんの相手の男性は、どういう罰を受けた?
今、どこで何をしてる…?」