イケメンエリート、愛に跪く
愛は舟のその質問に辛そうに笑った。
愛の中でその現実が一番消化できない堪え難いものだったから。
「それは… 話さなきゃダメ…?
相手の事は、あまり話したくないな…
別にかばってるわけじゃない、ただもう本当に思い出したくないの」
舟は自分にもたれている愛の肩を優しくさする。
でも、その行為とは裏腹に舟の頭の中は、嫉妬や憎しみや様々な感情がひしめき合っている。
「それは話してほしい…
そこをクリアしなきゃ、愛ちゃんは完全に元に戻る事はできないよ。
かばってないんだったら、尚更話して…
僕がちゃんと聞いてあげるから」
確かに、愛にとってその事こそが一番の元凶だった。
川野さんは何もなかったかのように私の前から去った。
いや、去ったわけではない。
私は完璧に彼に裏切られた…
「舟君…
話していいんだけど…
私はその事柄に関してだけは、まだ何一つ消化できてないの…
だから、今、必死に抑え込んでいる感情を表に出すのは怖い」
愛は震えている。
舟はもうこれ以上詮索するのは止めた。
愛を自分の胸の中にすっぽりと包み込み、優しく背中をさする。
愛の口から聞かなくても、舟は全てを知っている。
自分でも調べたし、細かい所はタロウに完璧に調べてもらった。