イケメンエリート、愛に跪く
川野誠、愛と同じテレビ局の新鋭プロデューサー、30代後半妻子持ち。
愛がデビューした時から、愛にご執心だった事は有名な話。
ある番組をきっかけに急接近した二人は、食事を重ね親しくなる。
愛は深い関係ではなかったという。
タロウの情報では、そこは何とも言えないという。
ま、僕にとって、その関係性はあまり興味がない。
だって、もう二人ともいい大人で、セックスがあったかなかったかは大した問題ではないと思うから。
夜の親密デートを撮られてから先の川野の行動が許せなかった。
会社は全面的に川野を守った。
それは川野の父が関東テレビの大株主だったから。
全く真実と違う話をでっち上げ、この騒動の責任を全部愛に押し付けた。
可哀想な愛…
恋人にも会社にも裏切られ、心も体もボロボロになって、そして何も知らず今でも会社をそいつをかばっている。
舟は愛の耳元でもう一度こう囁いた。
「愛ちゃん、必ず、絶対に、明日退職願を出してほしい。
土曜日でもアナウンサー室の室長は出てるだろ?」
愛は小さく頷いた。
「必ず、明日出すこと。
明日出せなかったら、最低でも月曜日には必ず出してほしい。
今、こうやって僕がいる時にやらなきゃ、僕がいなくなったらこんなチャンスはもう二度と訪れないからさ」