イケメンエリート、愛に跪く
愛のお母さんは、舟の隣に座る愛を横目で見る。
舟はそんな二人には気づかずに、幼い二人が写った写真をずっと眺めていた。
「愛がね…
その写真を見るたびに、舟君に会いたいって泣くもんだから…
だから、長い事、その写真はずっと伏せていたの。
急に日本に戻って来なくなった舟君の事を受け入れるのに、子供ながらに苦しんでた…
親が見てても辛いほどにね…」
舟はその話を聞きながら、愛の事を見ていた。
あの頃は日本に帰りたくても帰れなかった僕だけの問題だと思っていた。
母親の勝手な都合でアメリカに連れて来られて、でも、僕は本当は日本が好きなのにって…
でも、僕だけじゃなく愛も苦しんでたなんて…
僕達はきっとその頃から繋がってたんだ…
それから、舟は愛の両親と色々な話をした。
いつの間にか時間は過ぎ、もう正午になっている。
愛と愛のお母さんが昼ご飯の準備のためにキッチンへ向かった後、愛のお父さんは正面に座る舟の手を握った。
「舟君、ありがとう…
たまたまでもいいんだ、愛に会いに来てくれて本当にありがとう。
あの子の騒動はもう知ってると思うけど、ここ何日か笑顔を忘れていた愛が急に笑うようになってね、妻が事情を聞いてみたら、舟君が日本に帰って来てて18年ぶりに再会したって。
愛は舟君の事が大好きだったから…
こんな大変な時期に、舟君が愛の側に来てくれて、僕達はそれだけで感謝してるんだ。
舟君、本当に本当にありがとう…」