イケメンエリート、愛に跪く
舟は、今、ニューヨーク発成田行きのB777便の四角い箱の中で、やっと見えてきた東京の夜景を目を凝らして見ている。
日本の航空会社の飛行機に久しぶりに乗った。
子供の頃以来だから何年ぶりだろう。
ファーストクラスのシートの乗り心地もまずますだし、食事に関して言えば、今まで食べた機内食の中では五本の指に入るくらいの質の良さでもちろん味も最高に美味しかった。
というか、僕はきっと日本には甘いのだろう…
舞衣に愛の話を聞いた一週間後、世界を飛び回っていた“EARTHonCIRCLE”略してEOCの社長である母さんのソフィアがニューヨークの本社に帰って来た。
ソフィアは帰って来るなり、舟を呼び出した。
「シュウ、急で悪いんだけど、ロンドン支社に一年程行ってくれない?」
「ロンドン??」
舟は必要以上に驚いた。
だって、ここニューヨークで、僕は、忙しく海外を飛び回る母の代わりに大事な仕事を転がしている。
人によっては、ソフィア以上のやり手とも言われているのに…
「イギリスがEU離脱に向けて進んでいるのは承知してるでしょ?
うちの手掛けているIT関連も混乱気味で、市場も大変な事になっている。
私が腰を落ち着けてロンドンに入れればいいのだけれど、そういうわけにもいかないのはシュウも良く分かってるはず。
ということで、いずれはこの会社の社長になるあなたが行くべきだと思ったの」