イケメンエリート、愛に跪く
「あ、君が美弥ちゃん?」
タロウはニット帽を目深にかぶり最高の笑みを浮かべて、美弥にそう言った。
「な、何で、な、名前を知ってるんですか?」
……さっき、愛さんがそう呼んでただろ?
「愛ちゃんは俺の幼なじみなんだ。
この間、会った時に君の話を聞いた。
私に唯一親切にしてくれる可愛い後輩がいるって…」
タロウは機転を利かし多分そうだろうと思い適当に話すと、美弥の表情が柔らかくなるのが分かった。
「だ、だって、愛さん、本当に可愛そうで…」
美弥はタロウに気を許したのか、涙をためてそう話し出す。
美弥の目はタロウの顔に釘付けだった。
タロウは自分ではよく分かっていないが、普段の顔と笑顔のギャップが恐ろしいくらいにあるらしい。
そのせいか、女の人にはよくモテた。
「美弥ちゃん、今日この場で会った事は俺は何かの縁だと思ってる。
俺のお願いを一つ聞いてほしいんだ。
愛ちゃんは今日、とても大切な話を室長にしなければならなくて…」
タロウがそう言うと、まるで美弥は分かっているかのようにうんうんと頷いた。
「でも、勇気が出なくて未だに話せずにいるんだ。
俺が、さっき、午前の内に、何も考え込まずに室長と話しておいでって言ったんだけど」
まだ美弥はうんうんと頷いている。