イケメンエリート、愛に跪く
数分経っても、誰も何も言わない。
舟は小さくため息をついて、正面に座る局長を見た。
「局長はこのテレビ局を立て直したいと強く僕にアピールしましたよね…?
でも、今のこの状況を見ていると、局長のいうような刷新や改革は無理なんじゃないかと考えています。
新しい風を取り入れるには、古い物を捨てる勇気が必要です。
特に僕達の会社は、古い日本の独特のやり方を全く好まないし合わない。
古株に牛耳られているような会社なら、僕達は興味はありません。
他のニーズに合ったテレビ局に、声を掛け直します。
愛さんの話は一つの例えだったのですが、その話題を出しただけで、このように皆さんが固まってしまうなんて予想外でした。
この分じゃ、刷新や改革は見込めない。
局長、その判断でよろしいですか?」
舟はジャスを見て目を細めた。
ジャスにもう少し待ってほしいというような曖昧な意味を込めて。
局長は自分が作成した資料をずっと見ている。
そこに記した内容に何も間違いはないというような顔をして。
そこからまた数分が経った。
舟は出されたコーヒーを飲み干して席を立とうと姿勢を直した時に、局長がまた咳払いをした。
「高市様が、我々の会社の内情をどれ程知っているのか見当はつきませんが、確かに古い体質から脱却できていないのは間違いありません」