イケメンエリート、愛に跪く
「僕からの条件は、愛さんの退職願いを受け入れる事。
それも速やかに。
聞けば、愛さんはアナウンサー室の室長にもうその旨は伝えているそうです」
舟は、局長が胸を撫で下ろしている様子が表情で分かった。
後ろに座る面々も、顔を紅潮させホッとした表情を浮かべている。
柏木アナの退職なんて大した問題ではないみたいな顔をして。
「高市様、その約束はすぐに処理します。
柏木アナの退職金についても、社の規定通り…」
「後、もう一つ」
局長が話している最中に、舟は大きな声で自分の要件をかぶせて話した。
さっきとは明らかに顔つきが違う舟に、周りの人間はまた凍り付いた。
「後、もう一つ、それは愛さんのスキャンダルの相手、川野誠を解雇処分か、もしくは地方勤務にする事。
ペナルティは正当性がないと意味がない。
愛さんが受けた仕打ちに対し、この川野という男は何も処分が下されていない。
そこをクリアして、初めて刷新や改革と言えるのではないでしょうか?
どこそこの御曹司で父親がどれだけの力を持ってるのか知りませんが、僕にとってはそれはただの悪であり、この会社にとっても救いようのない闇だと思いますけど」
ジャスは冷静に周りの人間を観察していた。
局長の顔から血の気が引くのが分かる。