イケメンエリート、愛に跪く
舟の策略はこの時点でもう成功している。
局長がどういう答えを出そうが、愛の退職は約束されたも同然だ。
世界のEOCの高市を敵に回して得するものなど一つもない。
舟にとっては、関東テレビとの契約は大した問題ではなく、一番の問題は愛を何のしがらみもなく退職させる事、そして、おまけがあるのならその川野という男を最悪の窮地に追いやる事だった。
ジャスは、舟の冷徹さに感動すら覚えていた。
あのソフトな物腰と可愛い顔は、舟にとってはただのアイテムにしか過ぎない。
こいつを敵に回したら、一生、安泰は望めないだろう。
「どうしますか? 無理だと思うのであれば、この話は別の局へ持っていきますが」
舟のその言葉の後に、急に局長は立ち上がった。
「高市様、約束します。
解雇は厳しいにしても、四月の異動時期に地方勤務を命じます。
それも、ちゃんと社の規定に則って、三年から四年の周期で」
鬼と化していた舟の顔が、急に笑顔になった。
そのギャップにジャスさえうっとりしてしまう。
「それは確約できますか?」
舟のその問いに、局長を始め他の面々も大きく頷く。
「分かりました。
それでは、Canhuuの日本の提携テレビ局は関東テレビに決定します。
明日以降、事務の者に契約の手続きをさせるように手配します」
ジャスは英語で書かれた仮の誓約書を出し、お互いのサインを求める。