イケメンエリート、愛に跪く



「局長さん、僕は、関東テレビという会社の本気で改革に取り組んでいる姿勢に感動しました。
Canhuuと契約している間は、関東テレビの取り組む大きなプロジェクト事業や番組制作に対し、EOCの名前でスポンサーとして協力していきたいと思っています。
それを強みにその古株と戦って下さい。

あと、これも約束してもらいたいのですが…」


局長の顔にまた緊張が走った。


「この柏木さんの件は、ここだけの秘密にしてください。
彼女は何も知りません。

逆にこの件が外にばれたら、事業を進めるにあたりお互い何もメリットはありません。
なので、愛さんの事は抜きでこの商談は成立したと、そういう事にしておきましょう。

必ず、絶対に、内密でお願いします」


局長も他の人間も大きく何度も頷いている。
そんな面々に、舟は畳みかけるようにこう言った。


「逆に愛さんに感謝してくださいね。
愛さんの件がなければ、はっきり言ってこの局には見向きもしなかった。

愛さんへの恩返しを僕がしたいと思ったから、この話が始まったんです。

ま、それと、局長さんの素晴らしい決定もあったからですけどね…」


舟はさっきの目を釣り上げた表情とは真逆の、柔らかい天使のような笑みを浮かべている。
この舟の言葉で、ここにいる会社の軸となる人間は、愛を丁寧に扱うだろう。

ジャスは誓約書にサインをしている舟を見ながら、舟独自の愛し方を垣間見た気がした。

冷静沈着な男は、愛する人の気づかないところで、さりげなくしっかりと彼女を守る。
でも、それは金と名声を全て持っている人間にしかできないことで、そういう稀有な人間が舟だった。




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