イケメンエリート、愛に跪く
愛は舟からメッセージを受け取ると、退社時間と同時に会社を出て、急いで公園まで向かった。
この近くで仕事があったと書いていたけれど、今にも雪が落ちてきそうな寒い日に、舟を一分でも一秒でも待たせたくない。
「舟君!」
愛がそう呼ぶと、ベンチに座っていた舟は笑顔で立ち上がった。
「舟君、いつからここで待ってたの?」
愛は舟の手を触り、その時間が長かった事に気付いた。
「もう、カフェとか本屋さんとか、暖かい場所はいくらでもあるのに…」
愛はそう言いながら自分のマフラーを舟に巻き付けた。
そして、舟の手を愛の手で優しく包み込む。
愛にとって舟は、いつも自分の後を付いて来る子供の頃と同じだ。
可愛くて大好きでいつでも守ってあげたい、そんな風に思う気持ちは今でも変わらない。
「愛ちゃんの手、あったかいね…
大丈夫だよ、読みたい本があったからここで読んでただけ」
「もう、本だったら、尚更カフェで読まなくちゃ…
風邪引いたら、元も子もないでしょ…」
愛が舟の手に息を吹きかけようとした時、舟は愛を強く抱きしめた。