イケメンエリート、愛に跪く
「愛ちゃん、僕は、愛ちゃんの温もりがないと生きていけない人間になってる…
そんなに僕を甘やかしたら、僕は、愛ちゃんを死ぬまで離さないよ」
愛はクスッと笑って、体を離した。
「まずは、暖かい場所に移動しよう。
それから、ゆっくりと舟君の話は聞くから、ね?」
二人はタクシーに乗り、愛の知り合いの居酒屋へ向かった。
その店には、こじんまりとした掘りごたつ式の個室が何部屋か並んでいて、アメリカ育ちの舟は目を輝かせて喜んでいる。
愛はいつもの部屋へ通された。
以前、売れっ子のアナウンサーの時は、目立たず楽しめるように一番奥の部屋をいつも用意してもらった。
この部屋は自分の輝いていた時代を嫌でも思い出すけれど、でも、今日は、舟がいてくれる。
舟が目の前にいると、あの頃の私は一瞬で姿を消す。
舟の存在が大き過ぎて、今の私が一番幸せなのかもと思ってしまうから。
舟は、子供のように掘りごたつにはしゃいでいた。
ちゃんとヒーターで中が暖まっている掘りごたつは、冷え切っている舟の体を温めるにはちょうどよかった。
二人は日本酒で乾杯をした。
窓のない部屋に、ほのかな暖色の灯りが揺れている。
小さな二人用の掘りごたつは、手を伸ばせば愛の頬に触れる事ができる。