イケメンエリート、愛に跪く
舟がそんな事を考えていると、愛の指が優しく舟の頬を触れた。
「良かった…
体が温まってきたみたいで」
舟は息をするのも難しかった。
愛への溢れる想いが、思考を肉体を全てを占領する。
心臓は高鳴り、愛を自分の物にしたいという欲望が、冷静な舟を苦しめた。
舟は、頬に触れる愛の手をそっと自分の手で包み込んだ。
何も言葉は出て来ない。
愛を見つめるだけで、それだけで幸せだった。
「あ、舟君、そういえばね…」
愛は何かいい事を思い出したように顔がほころんだ。
「帰り際に室長に呼ばれて、朝出してた退職願いが受理されそうだって。
私が辞める日を記載していなかったから、いつにするかちゃんと考えといてって。
もう、びっくりしちゃった~」
舟は、愛の手を握ったまま微笑んだ。
何も知らないみたいな顔をして。
「愛ちゃん、僕は、愛ちゃんに今週いっぱいで辞めてほしいな…」
舟は愛のコロコロ変わる表情をずっと見つめる。
可愛すぎてため息しか出てこない…
「え、どうして…?」
舟は愛の手を今度は強く握りしめた。
「来週から、ハワイに行くからだよ。
気分転換と、それと僕の祖父母に会いに行こう。
僕のこの長期の休みを有意義に過ごしたいんだ。
もちろん、愛ちゃんも一緒に行く。
いいだろ…?」