イケメンエリート、愛に跪く
舟は本当に困っていた。
ハワイへ行く事を愛は喜んで賛成してくれると思っていたから、舟は愛の頑なな言葉に戸惑っている。
舟は、とりあえず、取り分けてもらったきりたんぽを思いっきりかじった。
「熱っ」
きりたんぽんの異常な熱さに、舟は驚いた。
「舟君、熱いの苦手だった?」
愛は舟の仕草が可愛くてしょうがない。
さっきまで俺様的な物言いをしていたのに、今は子供みたいにふうふうしている。
「あんまりこんな熱い料理って食べた事がなくて…
でも、大丈夫、ちょっと冷めたらすごく美味しい」
舟はきりたんぽを食べながら、愛の様子をジッと見ていた。
愛は何も言わない。
舟があれだけハワイの事を言っても、愛の気持ちは揺らがない。
舟はそんな愛をどう扱っていいか分からなかった。
でも、絶対にハワイには一緒に行きたい。
「愛ちゃん…
僕がどうしてこんなに急かすか分かる?」
愛は、舟の言葉の意図が全く分からない。
その意図は分からないが、自分の鈍感さは人並み以上だという事はちゃんと分かっている。
愛は本当に分からないから、正直に首を横に振った。
「愛ちゃんをおじいちゃんとおばあちゃんに会わせたいって言ったろ?
ほら、あの二人はもう高齢で、おじいちゃんなんて今年で85歳になったんだ。
いつかなんて言ってたら、きっと僕の祖父母は大好きな愛ちゃんに会えないよ」