イケメンエリート、愛に跪く
舟は自分の姑息さにため息が出そうだった。
でも、祖父母の事は決して嘘ではない。85歳になったのも真実だし、高齢なのは間違いない。
ただ一つ違う事は、二人とも病気一つもしない元気者だという事だった。
でも、そんな事言ってられない。
とにかく、愛ちゃんとハワイに行きたいんだ。
すると、愛の目が見る見るうちに潤んできた。
口に手を当て、一点を見つめている。
「そっか… そうだよね…
私の記憶の中にいる舟君のおじいちゃまとおばあちゃまは、いつも元気で優しくて、私の事も本当に可愛がってくれた」
愛はまたしばらく考え込む。
舟は仕事では色々な駆け引きで相手を騙す事はよくあるが、愛に限っては騙しているわけではないけれど、舟の胸は張り裂けそうに痛んだ。
「おじいちゃんもおばあちゃんも、愛ちゃんが来たら絶対に喜ぶよ。
嬉し過ぎて泣き出すかもしれない。
それに、今だから日本を離れる事が大事だと思うんだ。
僕や祖父母にとっても、でも一番は愛ちゃんにとって、最高にハッピーな事だと思うんだけど」
愛はそれでも悩んだ顔をしている。
「でも… その、どれくらいかかるのかな…?」
舟はすぐにピンときた。
「お金? 料金??
愛ちゃん、僕を誰だと思ってるの?
そんなお金、僕が全部出すに決まってるじゃないか。
愛ちゃんは、スーツケースに三日分ほどの着替えを入れて、それ以外は何も持たなくても大丈夫。
僕が招待するんだ。
そんなの当たり前だろ…」