イケメンエリート、愛に跪く



愛は舟の話を聞きながら、また舟の小皿にきりたんぽをよそった。

舟が想像できないほどのお金持ちだという事は、頭の中では理解している。



「舟君、ありがとう… よく考えてみるね」


愛は口元にちょっとだけ笑みを浮かべて、舟に小皿を渡した。


「愛ちゃん、今日中に考えて。
今日、僕と別れる時に、答えをちょうだい」


舟はちょっと意地悪かなと思ったけれど、でも、のんびり屋の愛に付き合っていられない。
僕には時間がないんだから…


「今日中?」


「そう今日中」


愛は困ったように肩をすくめた。


「あと、愛ちゃん、このきりたんぽすごく美味しいけど、もうこれで十分だから。
きりたんぽだけでお腹いっぱいになっちゃうよ」


愛は、真剣にそんな事を言う舟が可笑しくて笑った。
たまに垣間見せる幼い表情の舟からは、世界で活躍する仕事人だなんてやっぱり想像がつかない。


舟は鍋の湯気の向こうに見える愛の笑顔に、また心を鷲掴みにされた。
きりたんぽより僕は愛ちゃんを食べたいなんて言ったら、怒られるかな…







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