イケメンエリート、愛に跪く
Rescue5 ここの海に誓うよ
翌日、愛は、朝一番で室長に退職希望日を伝えた。
室長は複雑な表情を浮かべている。
「愛さんが辞めたいって思う程、辛かったなんて…
本当に悪かったと思ってる…
気付かなかったわけじゃない、気付かないふりをしてたんだ。
愛さんがここに戻ってきたあの日から、この会社は愛さんにとって針の筵だった。
本当にすまない…」
愛は室長の優しい言葉に涙がこみ上げる。
でも、今の私は不幸せじゃない…
「…いいんです、室長。
それより、私のこんなわがままを、会社が受け入れてくれた事に本当に感謝しています」
愛は本当に感謝の気持ちを込めて、深々と頭を下げた。
「愛さん…
送別会はしてあげたいんだけどなんせ急な事だから、多分無理かもしれないな」
愛は今度は大きく首を振った。
「送別会は、いいです。
その方が私も助かります…」
室長は寂しそうな目をして静かに頷いた。
「もうこの会社に縛られる事はないんだ。
ゆっくり休養を取って、まずは体を治す事…
実は、美弥さんから愛さんの病気の事を聞いてた。
本当に辛かったね…
これからは、新しい人生なんだから、しっかり幸せになるんだよ」
愛は室長と握手を交わした。
どんなに酷い環境でも、私の事をちゃんと見てくれる人がいる。
愛は自分の運の流れが変わっていく、そんな不思議な感覚を覚えた。
舟君と再会してから、確実に私の流れはいい方向に向かっている。