運命の出会いは誓いのキスから 《番外編追加》
久しぶりに二人で過ごす我が家。
今日限定の秘書はおしまい。

そう考えるとこのスーツも名残惜しい気がするけれど、やっぱり私は秘書ではないかな。


お互い着替えを済ませ、ソファに並んで座りながら、お土産に頂いたヨーグルトを食べた。


うん、やっぱり美味しい。
牛乳が美味しいから何でも美味しいんだな。


「優衣、ありがとう。優衣のおかげで契約を結ぶことができた」


「な、何言ってるんですか。総一郎さんの努力のおかげですよ。何度も何度も断られても諦めることなく、通い続けたからその努力が実を結んだんです」


そう、この契約は総一郎さんが自分の身を削って通い続けたから。よかった、本当に良かった。あの牛乳なら間違いなく、美味しいものが出来るに決まってる。


「俺、あのとき優衣に言われるまで牛乳を飲むなんて思いつかなかった。一番、肝心なことだったのに。だから優衣が飲んでみたいって言ってくれて、ハッとしたんだ。俺、契約のことばかりで飲んだこともなかったなって」


「……だったら私、少しは役に立ったんですかね。ただ、牛乳飲んでみたいって言っただけなんですけど」


「うん。すごく役に立ったよ。優衣、敏腕秘書になれるかも。どう?俺の専属秘書になりませんか?」


「もうっ、そうやってまた誘惑する。そんな風に言われたらやってみようかなと思うじゃないですか」


「あはは、俺は大歓迎なのに。でも、今日は本当にありがとう、優衣」


自分では本当に何もしていないと思うのに、「ありがとう」と何度も感謝の言葉を告げられ、少しは総一郎さんの力になれたのなら本当に良かったと思えた。


そして総一郎さんの忙しさもようやく落ち着いた頃、社内公募の詳細が発表された。
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