運命の出会いは誓いのキスから 《番外編追加》
「疲れたー!私も幸せになりたいよー!」


疲労がピークに達していたんだと思う。
気がつくと屋上の柵を掴み、泣きながら叫んでいた、大声で。


彼と別れたときも泣かなかったのに。

だからか、堰を切ったように涙は止まらなくて、言葉も止まらなかった。


「なんで、なんで私は幸せになれないの?こんなに頑張ってるのに。結婚だってしたい。幸せになりたいんだよー!」


柵を力強く握りしめて、夜空に大声で叫んだ。花火の音がかき消してくれるからとはいえ、非常識で迷惑な行為。


わかっているのにどうしても止められなかった。今日は本当に厄日だ。



『えっ、でも私、わざとじゃないですし』


発注ミスをした後輩には、そう開き直られ、挙句そんな彼女は定時でそそくさと帰って行った。

発注ミスは結局、工場と店舗になんとか連絡を入れて、営業で出ていた人に工場に立ち寄ってもらい、足りなかった商品を店舗まで届けてもらったので大事にはならずに済んだ。


でも、どうして、私がこの子のためにここまでしなくてはいけないの?
発注ミスは私がしたわけじゃないのに。

その後輩は昼からずっと、彼氏と今日の花火大会に行くと漏らしていた。


私は家に帰っても誰もいない。


友達も幸せそうで、愚痴なんて言いたくない。自分だけが置いてけぼりで悔しい。

だから誰にも吐き出せない胸の内をここで吐き出すしか術がなかった。
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