男女七人夢物語


春といえば、桜、衣替え、出会いと別れ___


まあ、色々あると思う。

でも、私の高校三年の春の情景はそんな綺麗な文字じゃ語れない。


綺麗に語りたいなら、そうだな。


物語みたいに三十パーセントの現実と、七十パーセントの理想と綺麗事がいる。


たとえば、こんな風に。

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騒がしい教室。

そこには、椅子ではなく机に腰掛ける生徒や、短いスカートで自由気ままに振る舞う生徒が大半を占めていて、私は充満した香水やら制汗剤やらの香りでおかしくなりそうだった。


けど、そこに先生はやって来た。新しい風を連れて。しかも、それはとても強くて優しいものだったんだ。


「おい、お前ら志望校決まったのか?分かっていると思うが、これはお前らの将来を左右する大事な選択だ。近いからとかって高校を選ぶのとは訳が違う」


今でも覚えてる。その先生は自分の自己紹介もそこそこに、そんなことを言った。


「いいか。自分が将来何になりたいのかきちんと考えて決めるんだ。何か悩みがあるなら俺に相談しろ。一人で悩むな」


初めてだった。そんなこと言う先生に会ったのは。

少し説教くさいけど、私たちのことをよく考えてくれているのが分かる。すぐに先生はクラスのみんなから好かれるようになった。

そして私は。

私は、一瞬で恋に堕ちた。

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