男女七人夢物語
それが誰かを私はよく知っている。
「………私には誰にも言えない夢があるんだ」
私の抱えた秘密。
「私は___笑われるかもしれないけど、将来の一番の夢は誰かの花嫁になることだ」
「えっ」
突然のカミングアウトに対応しきれない木下雪乃が、小さく声をあげた。
でも、木下雪乃には聞いてもらおう。
私と同じように、努力しないまま努力したフリをしてる木下雪乃に伝えたい。
「ドレスを着てみたい。もちろん、そんな幼稚な憧れだけじゃない。好きな人の一番の支えになるのが夢なんだ。今みたいにみんなじゃなくて、たった一人の誰かのために生きてみたい」
「………」
「似合わないことを言ってる自覚はあるんだ。だから、誰にも言ったことはない」
周りから言われるのは、将来は独身貴族っぽいとか、旦那が専業主夫してそうとかで、
「誰にも言えなかった」
「言えなかった………」
「うん。だけど、似合わないことだって分かっていても、その先に欲しいものがあるなら取りに行かなきゃいけないと思ったんだ」
井上奏太が普段無口にも関わらず、私に頭を下げたように、似合わなくても。
私も、もしもとか思う前に、似合わなくても何かアクションを起こさなければいけない。
「私は木下雪乃の脚本が読みたい」
「えっ」
「ただの趣味じゃないんだろ?」