男女七人夢物語
斎京也
クラスでの学校祭は思いの外上手くいった。
それもこれも木下雪乃がなぜか脚本を引き受けたからだ。さすが、一葉姉。
木下雪乃が書くことについては、みんな意外に思ったようだが、異論はなかった。
まあ、一葉姉が『異論があるなら、自分が書く覚悟を持ってしろ』なんて言ったら、誰も声を上げるはずがない。
もちろん、木下雪乃も。
あの日は木下雪乃のことを考えず、無神経にあんなこと言って悪かったと思ったが、こうなればただの杞憂だろう。
そんなこんなで、クラスの出し物はとりあえず劇に決定し、内容は色々な意見が出たが、まあその意見を参考にしつつ、木下雪乃が書いてくれればいいとのことでまとまった。
つまり、木下雪乃に丸投げである。
まあ、変な注文がある方が書きにくいかもしれないから、それでいいんじゃないかと俺も思う。
そして、あっという間に放課後だ。
「京也」
ノロノロと鞄に教科書を閉まっていると、聞き慣れた声が上からおちた。
「んー」
適当に返事をしてやると、最近よく言われるようになったその言葉をくれる。
「早く着替えろ」
分かってるよ。そんな不機嫌な顔すんなって。
そう言いたいのに俺はのらくらと、
「なーに、カリカリしてんのー野球部エースの佐山武くん?」
そう返してしまう。
そんな俺を許してほしい。