男女七人夢物語
「カリカリなんて」
「してるから。ほら、ちょい先行って。俺、学校祭のことで少し残るから」
「は?」
「仕方ないだろー?ほら、行った行った」
「っ、三十分以内に来なかったらぶっ殺す」
「へいへい」
適当にあしらわれている感じがしたのか、武は乱暴に部活バックをつかんで出ていく。
「全く、お前がエースなんだからしっかりしろよ」
誰にも聞こえない囁きがひとりぼっちの教室に落ちた。
嫌な感じだ。
「さて、暇だなー」
わざとらしく声に出しながら、気を取り直して誰かの机に落書きでもしてやろうかと、そう思ったとき、
「何やってんの?」
と、声がしたので驚いて顔をあげると、
「ん?ああ、陽葵か」
武が戻ってきたわけじゃないことにほっとした。
「部活行かないの?」
と、聞かれたが陽葵に聞かれたところで痛くも痒くもない。
「お前こそ部活は?」
「私は休み。忘れ物取りにきただけ。ってか、本当に何やってんの」
「うーん。これから考えるとこ?」
「はー?大会近いんじゃないの?」
「まーねー」
大丈夫。俺は余裕で笑って見せているはずだ。
「ふーん。まあ、早めに行きなよ」
「武と同じこと言うのな」
「当たり前でしょー」
まあそうか。でも武と違って陽葵は笑いながら起こったように言ってるだけだから。
だから、嘘言ってもいいだろ。