男女七人夢物語
嬉しそうに頷いた木下さんを名残惜しく思いながらも、振り返ることなく図書室を出た。それだけその時の僕は今日の出来事に満足感を覚えてた。
斎京也や佐山武の乱入も結果としては悪くなかったし、ここ数日の待ちぼうけも今日に救われたのだから。
柄にもなく、スキップしたい気分だ。
そんな帰り、僕はいつもとは違う道を行った。遠回りだったけど、ただいつも通り家に帰るような気分ではなかったのだ。
だからだと思う。
「そこの少年!」
そんな台詞に健気に振り向いてしまったのは。
「あっ」
目があったのはジャングルジムの上で仁王立ちする制服の女の子だった。
全く知らない女の子、だったら素通りした。それ以上にいつもの僕だったら、知っていたとしても、知らない振りをするだろう。
でも、いつもの僕とは違ったから、僕は呑気に声をかけたのである。
「ときっちゃん、何してるの?」