男女七人夢物語
今日、僕は間違いなく世界一幸せな男だった。
元天才ピアニストを憐れむような偽善者はいない。僕は知らない新しい道を歩いている。
木下さん。
木下さん。
木下さん。
貴女に、こんなにも救われている人間がいるんだ。君が書いていることには、書き続けていることには、それくらいには価値がある。
僕はスキップする。制服のジャケットはもういらない。
「好きだ」
木下さんとの空間が好きだ。
例えるならそれは暗黙の沈黙。
そういうやつ。よく分かんないけど、本当にそんな感じ。
「好きだなー」
誰に聞かれることもないその気持ちが少し恥ずかしくなって顔を覆った。けど、少し手の隙間を作って見上げた空は、恥ずかしげもなく顔を出す太陽が不思議なほど輝いている。
「眩しい」
僕はまたスキップしだした。