男女七人夢物語
「あっ、てかぶつかったときなんかノートみたいなの落ちなかった?」
「えっ!」
「あっ、これこれ」
私が床を見ようとする間に、斎京也はそれを拾い上げた。
「はい」
「あっ、ありがと」
渡されたそれに、落ちた拍子に閉じられたままになっていたらしいことにホッとした。
「どーいたしまして。じゃ、これでチャラってことで」
「いや、元はといえば京也が落としたんでしょ」
「あっ、バレた?」
そう言って笑い合う二人。
毎日こんな感じだから、これが二人じゃない男女だったら噂になりそうだけど、誰とでも仲良くできる二人だからこそ、そんな噂はない。
その時、次の時間が始まるチャイムが鳴った。
「やっべ、早く座んなきゃ」
「ほんと。じゃーね、雪野」
「うん」
私は頷いてまた背中を見送った。ノートを開く。
このノートは、私の夢だ。
だから、このノートは誰にも見せてはいけない。
なぜなら、私の夢は人に語れるような夢じゃないから。
さっき書いたページにバツ印をつけて、もう一度書き直す。さっきよりもスラスラと書けた。