男女七人夢物語
その無性にからかってやりたくなる顔を前に、俺は口を歪めた。
「俺が嫌って言ったらどうすんの?」
「理由が知りたい」
「木下が嫌いだから嫌だって言ったら?」
「仕方がない」
肩をすくめる木下。
それはこっちも同じだ。
もっと動揺するかと思ったのに、これには当然のように返すのだから、からかい甲斐もあったもんじゃない。
基準の分からん奴だ。
「まあ、本音を言えば生徒会とか忙しいからどうかなって話だよ」
「あー、なるほど」
「うん。脇役くらいならやってもいいけど」
「加々見くんが脇役?」
「なんだよ」
木下がびっくりしたように聞き返してくるので、こちらが面を食らう。
「加々見くんが脇役やったら、主役食い殺すでしょ」
「………誉め言葉として受けとればいいの、それ?」
「いや、事実だから」
木下は真顔でそう言い切る。そこまで言われると、木下には何の意図もないのだと分かっていても、なんだか気恥ずかしかった。